日本一寒いまちとして知られる十勝の陸別町は、人口約2,200人の小さいまちです。冬の早朝にはマイナス30℃近くなることもある地域で、その寒さをポジティブにまちづくりに活かして、冬には「しばれフェスティバル」というお祭りも開催しています。
では、北海道の最北というわけでもない陸別町は、なぜそんなに寒くなるのでしょうか。今回は、陸別町が日本一寒くなる理由を紹介したいと思います。
陸別町の冬の気温について
まずは陸別町がどのくらい寒いのか、月ごとの気温を見てみましょう。
1年で一番寒くなる1月には、日の最低気温の平均がマイナス20℃近くになっています。最高気温もマイナスで、1日を通してプラス気温にならない日が多くなっています。ただ、これはあくまでも平均、次に過去の最低気温の記録を表にしたのがこちら。
過去の最低気温の記録をみると、最も寒くなったのは2000年のマイナス33.2℃でした。恐ろしい寒さですね。
なぜそんなに寒くなるのか
なぜ陸別町は日本一寒いまちになったのでしょうか。その理由は、主に次の2つだとされています。
1.盆地だから
陸別町は北海道の内陸にあり、周囲を山に囲まれた盆地の地形になっています。
盆地となっている陸別町は、周囲の山の高いところで冷やされた空気が、街中にどんどん流れ込んでくるため、気温がとても低くなります。周囲をクーラーに囲まれているような感じですね。また、山に囲まれているため外側からの空気の循環は遮られ、冷気がたまっていくことになります。
2.放射冷却が強いから
陸別町は冬の間でも比較的晴れが多い地域として知られています。そのため、夜の間に放射冷却が強く働いて気温が低くなります。
日中は太陽で地面も温められるためそこまで気温は下がりませんが、太陽が沈んだ夜は、地面から上空へどんどん熱が逃げていき気温が下がります。
放射冷却は、晴れている日に特に強く働きます。それは布団の役割を果たす雲が少ないためです。雲がある場合は、地面から放出された熱を雲が受け止めて、再び地表面に熱を送り返す役割を果たします。
しかし、冬の間でも晴れの多い陸別町は、布団の役割の雲が少ないため、夜の放射冷却が強くなってしまうのです。
では、なぜ陸別町は冬に晴れることが多いのでしょうか。それは、北海道に雪の降るメカニズムが関係しています。冬の間、中国大陸の北部は冷たい高気圧に覆われる一方で、北海道の東側の海上には低気圧が発達し、いわゆる西高東低の気圧配置になります。風は気圧の高い方から低い方へ流れるため、日本には西から東の方向へ風が流れることになります。
その際、冷たい風が暖かい日本海の上を吹き抜ける間に水蒸気を補給して、湿った冷たい風として日本に到達します。この風が山にぶつかって上昇することによって雪雲となり、日本海側に雪を降らせます。一方で雪雲は日高山脈や大雪山系の山脈で遮られるため、陸別町のように太平洋側やオホーツク海側のまちでは晴れる日が多くなり、放射冷却が起こりやすくなります。
また、日本海側に雪を降らせた空気は、山を越えた後、乾燥した風となって太平洋側に吹きます。湿度が高い湿った空気は、雲と同じような働きをして冷え込みを弱めますが、乾いた空気はそのような効果がないため冷え込みを強めてしまうのです。
まとめ
今回は陸別町が日本一寒くなる理由を紹介しました。陸別町は、盆地であることと放射冷却が組み合わさって日本一の寒さを作っているんですね。
マイナス30℃なんて滅多に体験できるものではないので、暖かい恰好をしてぜひ冬の陸別町に遊びに行ってみてくださいね。